授業紹介:マネジメント・ケーススタディ①

 会計ファイナンス学科教員の伊勢坊です。私が担当している授業「マネジメント・ケーススタディ」を紹介します。
 この授業は、実務経験のある方々を講義にお迎えし、自身が携わった具体的なビジネスの実例経験をもとに、課題の発見から解決にいたるプロセスを、臨場感あふれる「ライブケース」として展開します。学生は、教員や実務家と共にディスカッションに参加し、当事者の視点に立って、課題解決の現場を追体験することを目指し、ビジネスモデルを考え、発表します。各ケース共に、グループでビジネスモデルを練り、発表を行うため、負荷の高い授業ではありますが、学生からはとても好評な授業です。

 今回、ご講義いただいたのは、花王株式会社の石川雄一先生です。花王株式会社といえば、アタック、ビオレ、メリーズ、クイックルワイパー、ワイドハイター、ヘルシア緑茶など、生活に密着した優れた商品を有し、その多くがいわゆるロングセラーとなっています。石川先生は、花王株式会社に入社後、営業や販売企画を経験され、マーケティング業務に従事されているマーケッターで、メンズケア商品、サニタリー商品、ファブリックケア商品などの担当を歴任されています。
 石川先生からは、花王グループの概況をご説明いただくとともに、ご自身がマーケッターとして携わられた、花王を代表する商品の一つである生理用ナプキン「ロリエ」のマーケティングを事例にご講義いただきました。

 学生に与えられたテーマは、20代前半の若年層に対するロリエのブランド力向上施策立案です。小中高生は親が買ってきた生理ナプキンを使うことが多いと考えられますが、一人暮らしや社会人になると自分で購入するようになる人が増えるでしょう。自分で購入する際にロリエが選ばれるためのブランド力向上施策を考えることが、今回の課題です。
 学生からは、PMS解消のコンテンツ配信、生理体験会、サニタリーショーツとナプキンのセット販売、ロリエのサブスクリプションサービス、ナプキン宅配便、コンビニでのナプキンばら売りといった企画が提案されました。各グループともに公開されている調査を引用したり、データがない場合は知り合いにインタビューしたりして、生理の何が問題なのかという課題設定を丁寧に行い、それに対してロリエが出来る施策を提示することが出来ました。しかし、それらを実際にビジネスとして考えた場合に立ちはだかるいくつかの壁について、業務に携わる実務家の先生から難しさを伺い、実現可能性をさらに考えていく必要があるということに気がついたようです。

 授業後の学生の感想をいくつかご紹介いたします。
● 毎月必要なナプキンはサブスクに向いていると思っていた。しかし、実務家の先生が、サブスクといっても、ナプキンのサブスクと音楽のサブスクは大きく違うと仰った。その大きな違いは、配送費である。この点がクリアできれば皆が助かるサービスだと思うので、どのようにクリアすることができるのか、もう少し考える必要があったように思う
●よさそうと思った企画が「なぜ」実現されていないのか?「なぜ」を考える必要があると感じた
● 次回は、消費者の課題解決だけでなく、考えた案の課題を考え解決策を導けるようにしたい
●「ロリエだからこその付加価値」に焦点を当てて、目的から現状分析、解決策、具体案、動線という構成で説明できたことが良かったと思います。また、具体的なターゲットを定めて、その方達の現状や環境、需要を考慮した上で提案を考えられたこともよかったと思います。
●花王で働かれている方の想いやブランド構築について直接聞くことができてとてもいい機会になりました

 石川先生のご講義を伺い、マーケティングという活動は、個別の商品のブランド力や市場シェアを高めるのみならず、商品を手に取る顧客に対して、この商品及び企業がどのようなことを目指しているかを示す活動であると感じました。今回、改めて、ロリエをはじめとする花王各商品のブランドパーパスと花王の企業理念を詳しく知り、それらの一貫性がいかに重要か、学びました。商品を通じて企業理念を消費者に伝えることは容易いことではないと思いますが、その難しさと面白さを教えていただいたような気がします。
 改めまして、石川雄一先生、ありがとうございました。